4月16日

 色々と調べ物をしているうちに、あっという間に時間が経った。状況は待ったなし。どこかで踏ん切りを付けて、外に向かって行動せねばならないが、情けないことに今日はそこまでできなかった。また重要なものから軽いものまで、あちこちにメッセージを送り、返事を待っていたけれど、何も返って来なかった。今日はそんな日。

4月14日

 新宿のCurry 草枕が先月閉店した。その後約1か月だけ予約営業をするというので、最後の食事に行ってきた。食べたい物、入りたい店が、いつも何も思いつかなくなるあの新宿~渋谷辺りのエリアで、自分もMも好きな唯一の店だった。混んでなさそうなタイミングでさえあれば、いつもあの店を選んだ。

 初めて入ったのは今よりもずっと狭い旧店舗で、他人と相席した。少年ナイフのライブ音源が流れている中、汗をかきながら食べた。なんとなく幸せな記憶。

4月12日

 会社を辞め、次の仕事の準備をしている。手続きをしたり、勉強したり、知り合いの店でアルバイトしたり。「がんばって」「ふーん」「舐めてない?」「大丈夫なの?」色んな言葉を受け取って、少しずつ自分の生活を作っていく。前向きにやっていきたいと思っている。

9月8日

 しばらく日記を更新できずにいる間、少し東へ引っ越した。良くなったことも悪くなったこともあるが、通勤が遠くなったのがけっこう堪える。いつも渋滞のことばかり考えている気がする。

 今日は台風が接近している金曜日。朝から土砂降りが続いて、夕方近くなった頃に小降りになった。職場で聞いた話では、近くの小学校などは早めに授業を切り上げているらしかったし、Mも午後になって帰宅許可が出て家に着いたという連絡を寄越した。天候が思ったほど荒れなかったせいなのか、それとは関係なくなのか、おれの職場は通常運転だった。そういえば帰る途中、住宅街の交差点で、小さな姉妹を見かけた。姉は片手に閉じた傘を持ち、もう一方の手は合羽姿の妹としっかり繋いで、道路を渡るタイミングを待っていた。停車して先に渡らせると、姉はこちらを小さく振り返って嬉しそうな顔をして頭を下げた。なんてことのない出来事だけど、こういうことに関わらせてもらえたことが、とても嬉しかった。彼女たちはただ幸せに生きていってほしいとだけ思った。おれも歳を取った。

6月20日

 勤務時間の不規則さが、じわじわと体調に響く。寝たい時間に起き続けていたり、活動しなければならない時に一歩を踏み出せない。気合が足りないと言われれば、返す言葉は、逆ギレの悪態を除いて他に無い。

 レコードやCDを買うのを控えていたせいか、あまり音楽自体を聴かなくなってもいた。聴いてると欲しくもなるからな。ただ、そうしていると自分が望まない騒音や事柄に囲まれる時間の割合が増えすぎて、段々調子を崩していく。自分がそういう状態に陥っているということにも気づけずに、なんとなくできた一人の時間にふと思いついてレコードをかけるとハッとするというか水を得た萎れた植物というか。

 Yo La Tengo "I Can Hear The Heart Beating As One"。久しぶりに聴いた心の一枚と言えるアルバムは、日が長い時期に特にわが心を捉えた。

6月4日

 日曜、休日。季節の変化に立ち遅れた体に、怠さがある。いちいちエイと気を入れなければ動けない。毎年のことだ。立ち遅れないやり方はあるのか?日が長いのは嬉しい。

 馴染みの店の番をするため、昼に家を出る。シャッターを開けて、照明を付け、レジ金や店主の書置きなどを確認する。回を重ねて慣れてきて、適当になってしまっていないかと不安になる。開店から3時間弱、ひとりもやって来やしない。シャッター、開いてるよなと何度も不安になるも、その後はぽつりぽつりと来客があった。本、音源、Tシャツ、ほとんどの人が何かを買っていく。古物以外が売れたので、売り上げの額面は上がった。利益としてはどうなのだろう、分からない。日曜恒例の観光目当てのような客は少なくて、ちょうどいい感じに役割を果たせたのではないかという気がした。Tシャツは、店の普段の客層とは雰囲気の違うカップル2組が買って行った。フーンと思っていると、閉店間際に近所の古着屋の店主が寄ってくれて、彼が着ているのを見て欲しくなって買いに来てくれた客だったということを控えめに話してくれた。ミステリの解決編のような楽しさのままにレジ金を数えて、少し慌て気味で店を後にした。早く寝たかった。

 

5月27日

 用事を済ませに東京の西側へ行った。思ったより早く済んだところで、ふと寄り道でもする気になった。何年も前に一度訪れたレコードのかかっている喫茶店、ひとりでそこに行こう。たぶん近い、行き方は調べればいいさ。見慣れぬ街の駅前の、いくつあるかも分からない停留所のひとつに留まっているバスに乗った。バスは、みるみるうちにスマホの案内ルートを離れ出した。交通費にして五百円という道のりは、近いのか遠いのか。西日が明るかった。来週から天気が崩れやすいと聞くし、春は終わり、気持ちの良い気候の休日はまたしばらく先になるかもしれないと思った。

 喫茶店は昔と変わらず静かに営業していた。ゆっくり日が暮れていった。