本屋

 なんとなく面白いことが何も思いつかない。思い付こうとすればする程、出てきたアイディアがつまらなく思えるし、どうせうまくいかないと決めつけてしまう。夕食後。急に本を買いたいと思った。思ったというよりも、遠い誰かからのメッセージのような。本を買いなさい。それ以上のことを考えるとダメになるので、思考より早く車に乗った。それはそれほど難しいことではない。閉店前の人気の無い本屋で静かに選ぼうとしたが、泣き叫ぶ子供がいた。もう帰りなよと思いながら横目で見ると、しっかりマスクはしていて、偉いなとも思った。閉店の音楽を聴きながら、文庫本二冊を会計した。