2月10日

 雪が降った日は、日記に書いとかなきゃなという気持ちになる。雪国に住んでいた頃は思わなかったことだ。朝から曇り空にチラチラと雪が落ちてきて、睫毛に乗ったそのひとつが融けずにしばらく残った。ここで降る雪は可愛げがあるなと思う。昼食に出る頃にはもう弱い雨に変わっていた。

 先月から将棋の王将戦七番勝負が行われている。前人未到の実績を誇り長く将棋界に君臨してきた羽生九段が、その実績を超えてゆく期待を一身に集めながらも未だ底を見せない藤井王将に挑戦している。挑戦者の立場こそ意外とは言え、この対戦は誰もが夢に見ていたはずの世代を超えた頂上決戦だ。今日の第四戦は羽生九段が勝って2勝2敗のタイに持ち込み、既に互いに譲らないすごいシリーズになっている。羽生九段はここで勝てばタイトル通算百期となる。いずれは藤井王将が塗り替えるのではと簡単に想像したくなるが、仮に五冠をずっと維持しても百期に達するのは20年も先のことになるし、三冠維持だと30年以上かかる計算だ。羽生さんの積み上げてきたもののとてつもなさに気が遠くなる。数年前にタイトルをすべて失い、A級リーグからも去った羽生さんが、この王将戦に戻ってきて繰り広げている戦いぶりは、胸が熱くなる。どんな結末が待っているのかまだまだ分からない、最近の楽しみ事のひとつである。

 ニュースでトルコ・シリアで起きた大地震の報を目にした。街は壊滅状態で、おれがそこにいたなら生きていただけでも幸運だと思うだろう。すぐに死んだ方がましだと思うかもしれない。映像では3人の親子が救出されたとキャスターが説明した。分かっている死者数が既に2万人を超えている中で、救出された人は何人くらいなのだろうか、とか、何も無い原っぱで暮らしていたら地震なんて怖くないのだろうか、とかまとまらない思いが巡った。

 


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