日記 9/20

 祖父の他界により帰省した。

 出かけるのが遅れてしまい、着いたのは夜中(さっき)になった。一人きりで車で帰るのは初めてで、道程は長くとても疲れた。仙台を過ぎた辺りから他の車がほとんどいなくなり、電灯がなく反射板しかない暗い高速道路をひたすら進む。今何時でここはどこなのか。前沢のサービスエリアで休憩にした。ここで降りると空気が東北のそれになっていることをいつも実感する。

 祖父の最期は前触れもなく、施設で面会を終えた後、昼寝をしたまま目を覚さなかったそうだ。かなり気まぐれで、何を考えているのか読めないところがあった。幼いおれに、誕生日とかでもないのに唐突に絵本をくれたことを、ついこないだのことのように思い出せる。時代小説を片端から読んでいた。いつだったか、太閤記を読んでいた祖父に、父が「おもしろいの?」と聞くと「あんまり」と答えていて、おれはそれが少し可笑しかった。晩年はよく戦争の思い出を話していた。悲惨な話もたくさんあったが、現地で食べ物を得る話は喜劇的にも聞こえるところがあった。どちらも生きるためにしたことという意味では同列だからか、祖父はそれらを同じ調子でいつも訥々と話した。

 おれは祖父の年齢をはっきり把握していなかったが、この11月に百歳になるという。長いことありがとう。