コロナ流行下の店で

 今回のまん延防止もだいぶ経って、近場に限られた行動範囲に物足りなさを感じている気がしていた。今や贅沢なことだが、遠くの町に行きたくなったので、なんとなく個人経営の喫茶店を数軒ハシゴしてみた。どの店も、久しぶりではあるが初めての入店ではない。しかし個人店の方達は客の顔を本当によく憶えているもので、(普段は来ないけど見たことある顔だな)という微妙な反応をされる。それだけで済めばいいのだが、コロナのことがあるので、"よく来てくれたね"か"こんな時になんで来たの?"のどちらかの反応を表されることが多い。本当に顔見知りでおれが他県の住人であることを知っている相手だと、特に後者の反応が強い。世間の状況からすると、妥当な反応ではある。しかしこれが前者だろうと後者だろうとあまり関係なく、けっこうしんどい気分になって困ってしまう。別にめちゃくちゃあちこち遊び回っているわけでもなければ、しんどそうな店にお金を落とそうなんてことは微塵も思っていない。感染防止のマナーや店の決め事に気を付けることには、おれは大してストレスを感じないから、何にも変わったことなんてないように普通に接してほしくなる。そのへん、やはり都内の店では地方とは違う緊張感があって、事情が大分違っているのだろうと思った。晩ごはん時に通った都心の商店街は既に人気が無くて、地方のシャッター街のようだった。目当てのコーヒー豆を買ってさっさと帰った。

 そういえば、緊急事態宣言やまん延防止の度に、いつもはそれほど混まない個人店がなぜか意外と混んでいる状況にたまに出くわす。今日行った喫茶店もどこも満席に近かった。制限が解かれた時の方がわっと混みそうなものだが、逆に閑散としていたりする。理由はひとつではないと思うが、店の人にとっても頻度は少なくとも店を愛用する客である自分にとっても、早くいつもどおりのペースに落ち着いてほしいと思う。

 気分を抑えきれずに外出しても良い気分になれることはあまりないが、貴重な経験として今のあちこちの風景を覚えておくべきなのだろうか。