店日誌

 この土日は古本屋のレジで店番をしていた。半日ずつではあるが、他に店員はいないのでそれなりの緊張感を味わい、最後の時間帯に会計を間違えてしまった。消沈。

 数は多くなくとも、本当に色んな背景を持って、人は店にやって来る。目当ての品がある人、隣の店のついで、通りかかり、チラシの設置依頼…。誰も現れない時間が続いたかと思うと、急に数組同時に戸を開けたり、一人の人がじっくり選んだ本を大事そうに抱えて出て行ったかと思うと、同時に入っていた客は全員何も買わなかったりする。おれも普段は客だから、それぞれの心理は後付けで想像することはできるが、何ひとつ事前の思い通りにはならないと思っておいた方がいいのかもしれない。その上で「本を選んで、買って、読むことを普段からしているな」という人が現れると、なんとなくレジに座っていてよかったと思える。

 BGMとして、なるべくうるさくない音楽がいいかと思って流していると、客が来ないと眠くなってくる。なので来客の空いた時間帯にパンクロックを少し大きめに鳴らしていると、なぜかどんどん客が来る。こりゃいかんなと、おとなしい音楽に変えたら、すぐに皆帰った。あららと思いつつパンクロックを再開したら、また客が入りだした。つま先でリズムを取っている人までいた。別の空いた時間では、地獄の底のドンチャン騒ぎのような強烈グルーヴのフリージャズを聴いていたら、年配の三人連れがやってきて、またしてもこりゃいかんと思ったが、よく見ると彼らはパーカッションに合わせて指で鞄を叩いたりしており、これは誰の音楽ですかと興味まで示してくれた。意外となんでも大丈夫なんだな。自分では配慮だと思っていた思考は、ほとんどただの偏見だったのか。そう思っただけで、少し自由になった気がした。

 


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