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 もしもおれが誰からも脅かされずに何も心配なく生活できる状況になったなら、おれは周りの人々に、もっと穏やかで寛容な態度で接することができるのではないかと思っていた。しかしそれが、大きな組織のトップに立つとか、手に余る権力を得ることでなされた場合、思い描いた像とは丸きり逆の人間になってしまうこともあり得る。それはきっと歴史の中で何度も繰り返されてきたことなのだろうが、最近の世の中を見ていても痛感する。おれがそんな立場に身を置くことはまず無いとしても、状況として先述の仮定と共通する部分は多分にあるように思う。

 そういうところから考えていくと、漠然とおれがいつか果たさんと思い描く他者へのやさしさのようなものは、結局卑小な自己愛に帰結する割合が高い。人生にあとどれくらいの時間があるのか知らないが、もっとよく考えて、少しずつ行動によって抱えた種を育てていくしか術はないのだと、今日はそう思う。際限なく問題を先送りかねないが、永遠のテーマとはなるべく思いたくない。