ロックンロールリバイバルの頃

 おれが音楽を聴き始めた頃、世間はロックンロールリバイバルというブームの最中にあった。60年代くらいのような、楽器演奏を主にしたシンプルなサウンドをもつ若いバンドたちが大勢リリースした。ブーム自体は横目で見ているうちにいつの間にか去っていたが、自分の音楽遍歴の初めの方にそれがあったから、視野を広げる足掛かりとなった要素は少なくない。

 好きだった有名なバンドは、The White StripesとBlack Rebel Motorsycle Clubがある。前者はすっぱり解散し、後者は初めからブームなんて無かったかのようにマイペースに活動を続けている。しかしおれは、どちらかというとブームのドサクサ的にデビューした(させられたのかもしれない)ような、ちょっと変なミュージシャン達がもっと気になっていた。

 A.R.E Weaponsはチープなデジタル的なサウンドで、インダストリアルと呼ばれる音楽について知るきっかけになった。そういえば、前に勤めていた工場のポンプの音が、彼らの曲と同じような音を出していたので、録音して古い友人に送って笑いあったこともあった。The Raptureはダンスパンク的なビートと切れ味のあるギターが特徴だった。そのサウンドはブームの主流とちょっとずれており、ずっと新譜を気にしていたけれど、結局決定的なアルバムは出せなかった気がする。解散前に出したアルバムに好きな曲が多かった。数年前に再結成したとかしないとか、聞こえてきた気がするがどうだったんだろう。

 ノルウェイのCato Salsa Experienceが大好きで、手に入る作品は過去作もすべて買った。ガレージロックな作風はブームにおあつらえ向きだったかもしれないが、出身国も相まってか、徐々に知る懐の深さは、何かの単純なリバイバルという感じがしなかった。そのくせ情報があまり無いから、結局どういうひとたちだったのか未だによく知らない。今はもうバンドは無くなったらしいけど、その少し前に突然フリージャズの御大Joe McPheeとThe Thingとの共作アルバムを出していて、これはおもしろくて今でもよく聴いている。後に知ったところでは、ノルウェイのフリージャズレーベルからリリースされていたらしく、共演に至った経緯が気になるが、いつか分かる時が来るのだろうか。たぶん来ない。


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