テレビ番組

 夏から二人で暮らしている。同居人はいわゆるテレビっ子で、特に見たい番組が無い時間帯でも、何かしらを画面に映しっぱなしにしている。引っ越す時に処遇を考えたおれのテレビは、再び大役を得たようだ。こないだ見かけた番組は、日本固有の文化や食べ物に強い興味を持つが、日本を訪れた経験のない外国人を日本に招いて本場の技術や味に触れてもらうという趣旨だった。何年か前から放送されているようで、コロナ禍になっても過去のエピソードの振り返りで番組が続いているということは、それなりに評価されているのかもしれない。

 来日前の彼らは、独学で興味の対象を突き詰めて再現を試みており、その成果物は完成度の高い部分とやり方が分からなくて自前の工夫をした部分とが入り混じったユニークなものだった。当然彼らはそれに満足しておらず、その孤独な過程で生じた疑問や課題に対して、本場の人々との交流を通して見識を深めていく。

 そんな感じでついつい最後まで見てしまったが、彼らが日本に行く前の「実はまだ本物を知らないんだ」という少し不安そうな表情が、おれの目には本当に楽しそうに輝いて見えた。そこから始まる何かが、無駄なものであるはずがないと思った。