路上で

 今週は週初めの予報ほどには天気が崩れなくて、夕方もまだ高い日の下を、同時に入社したO君と、"今週の仕事もやっと終わったね"と話しながら駐車場まで歩いた。お互い少し気が抜けているのが、マスクごしにでも分かる。

 今日は、政治家の安倍氏参院選の応援演説中に襲われて亡くなった。今おれが事実として分かっていることは、それだけだ。とても大きな出来事だったから、色々な声が言いたい放題飛び交っている。しかしその全てが当たり前のように違和を伴って届く。その列に加わろうとは露ほども思わないし、あんまり真面目に受け取ってもいないけれど、そもそもおれは自分の裡にさえ、これについてあらゆることを解決する理屈を見つけられない。確かなことは、今日も攻撃されて命を落とした人がいることがやりきれないということだけだ。

 おれは知る限りの彼の言動を、好ましく思ったことが果たしてあったかどうか分からない。押し入れの奥にある彼の施策で配られたマスクは、遺品のようになってしまった。けして因果応報だとか自業自得だとかそういうことではなく、うまく表現できないが、彼の言動は把握しきれないほど複雑に影響し、その経過としてこんな出来事を引き起こす可能性をも高めてしまっていたように思う。そして起きる可能性のあることは、いつか起こる。それは誰もが同じように。