"The Americans"のこと

 ネットをうろついて、少し前に音楽家が書いた写真集の評論連載を見つけて読んでいた。ある記事の流れの中で、Robert Frankの"The Americans"に関する言及があった。写真史の中でも最も重要と位置付けられており、無知な自分も感じるところがあり大切に持っている一冊である。ただ、自分にとってこの写真集は眺めていて気持ちがすっきりするとか温まるとか、そういう反応を促すものではない。なぜこの本を手にしてしまうのかと言われれば、おれには言葉にし難いものがある。今日読んだ記事では、この写真集が社会的にどういう意味を持っているのか、ここに収められた風景が一体何を伝えているのかを、明確に示していて、なおかつ自分が感じていたもやっとしたものとも符合する気がして興奮を覚えた。自分も生まれた土地から離れて暮らしている者ゆえの思い入れか、アメリカの姿をむき出しにしたこの表現は、遠くスイスから渡って来た彼だからこそ持ちえた視点だったと思えてならない。これを遺した若い写真家もすごいが、発表当時に的確に評価していた人がいたのなら(多くはいなかったはずだ)、それも凄いことだなと思う。

 既にクラシックとも言えるし膨大な評価を受けてきた作品だが、なんとなくでしか写真を見ていない自分にとっては新しい衝撃を感じた記事だった。