1月1日

 今日から年が変わった。テレビもラジオもつけないし、誰とも会わないから特別なことは何も無い。安心するような気持ちともったいないような気持ちが混ざったまま時間が流れていった。年末に刃物で指に大きめの傷を負ったせいで、水仕事をする気が起きない。

 Mがいないうちに部屋を片付けようとしているが、増えすぎた物を手放さない限り、大した成果は望めない。せめて1年以上触れることの無かった本やCDなどはどこかに仕舞おうとして棚を眺めると、これが本当に自分の趣味なのか疑わしいタイトルがかなりある。それらから透けて見えるのは、自分の思い入れではなく他の誰かの顔や名前だ。誰かが好きなものをとりあえず自分も手に入れて、何か良い気になったのだろうか。おれは寂しいやつだ。

 チラシなどの印刷物が大量に出てくる。捨てても捨てても受け取る羽目になる。どれも載っている情報にはほとんど興味が湧かないが、しっかりした紙にきれいに印刷されていてそこには感心する。結局は処分する以外の選択肢はない。しかし誰かがせっかく作ったピカピカの完成品をおれの手でごみにするのが忍びなく、無意味に取っておいてしまう。忍びなさが積みあがって、いつしかこれをおれに受け取らせた連中に怒りがこみ上げてくる。ポストに強い表現で「チラシおことわり」と掲げている家をたまに見るが、こういう気分が原動力なのかもしれない。

 掃除機をかけながら、転職活動をしていた時のことを思い出していた。面接の後、担当のエージェントを通じて、おれに対する先方の評価を聞くことが何度かあったが、よく言われたのが「なんとなく元気が無いように見える」ということだった。もちろん自分は普通にしているつもりだが、初めてそれを言われた時、そうかと思って次から元気に見えるよう努めてみた。しかし相手の反応は大抵同じだった。"元気の無さ"については、未だによく言われる。なぜなんだろう。いつからそうなんだろう。なぜ他の人たちは"元気"なんだろう。

 Paul Bley "Open, to love"、Bob Dylan "Blood on The Trucks"、Bastro "Antlers:Live1991"、V.A "Studio One Ska"などを聴いた。