余裕

 毎日、朝日の昇る前に起き出して、まだ少し暗い街を通って出勤する。薄暗い事務所に辿り着き、窓の無い職場で過ごし、退勤する頃にはもう夜が落ちてきている。そんな生活をしている人は世の中にどれくらいいるのだろう。それほど珍しくはないのかもしれない。

 ここのところ、すっかりSNSをチェックしなくなった。以前は朝昼夜と時間があれば開いていたが、今では数日に一度、夜に余裕があれば少し眺める程度だ。それで何も問題は無い、分かっていたことではあるけれど。

 寝る準備が整った頃、新しくできたという喫茶店のアカウントを、なんとなく覗いてみた。明るい午前の日差しの入った店内の写真と共に、今日の開店報告が静かな言葉でされていた。ああ、今日はこんなに良い光が差していたのか。ほんの一瞬、こみ上げるものを感じた。そこで初めて、ここしばらく日中の天気を全く知らないことに気が付いた。