The Smileのアルバム

 The Smileの1作目のアルバムが発表されて、すぐに気に入ってよく聴いている。RadioheadのThom YorkeとJonny GreenwoodにドラマーのTom Skinnerを加えた3人組だ。様々なタイプの曲が収められていて、聴く度に新しい驚きがあるような作品である。2010年代に、特にポップスの分野でヒットした若い世代の強力な作品たちは、収録されたすべての曲が代表曲となるような高い質を持ち、一丸となってアルバムのストーリーやメッセージを表現している密度を持っていた。一方で、ここのところよく発表されている、それよりももっとベテランの世代の作品には、うまい表現が思いつかないがもう少し遊びがあるというか、一聴しただけでは捉えきれない、でもなんか気になるナゾめいた曲が含まれていることが多いように思う。どちらも優れていることには違いないけれど、おれはどちらかというと後者のような雰囲気を好む傾向がある(年齢のせいもあると思う)。興味はあるけど把握しきれないくらいの方が、ライブ演奏を聴いた時に驚いたり、季節や聴く時間などふとした場面で全く違う印象に気付いたりして、長い付き合いになる作品が多いからだ。消費して終わるのでなく、初めて聴いた瞬間から自分とこの作品の関係が始まっていくのだというような気分になる。今回のアルバムも、長く聴いて色んな景色を見つけたいという気持ちになった。