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 少し前のことだが、安倍元首相の国葬が行われた。行うことについての是非はともかく、その様子はテレビのニュース番組などで少しだけ見た。それについて今も心に引っかかっているのは、そこで流れていた音楽だった。ほんの少し聴いただけなのに、長いこと忘れていたようなこの国のとてつもない暗さを感じた。おれは音階とか調についての知識を全く持たないので何とも言えないが、あれはいつ頃作られたものなのだろうか。国の大きな行事で使われるくらいだから、ある程度古い伝統を持った音楽だとは思うが、深い深い井戸の底を覗き込むような旋律は、おそらく作られた当時の気分をそのまま湛えていて、なんとなく触れてはいけないもののようなおそろしい気持ちを覚えた。

 もしおれが死ぬ時も音楽を流してくれる人があったなら、帰ってきたヨッパライあたりで大丈夫ですので。